ゴール直前の悲劇 - プラチナム テレスコープ

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ゴール直前の悲劇

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Image:City of Lennox

何事も最後まで気を抜いてはいけない。
もう大丈夫と思った時にどんでん返しが待っているものだ。

勝負には拘っていなかった。自分らしくあった。そんな言葉が陳腐なものとして吹き飛んでしまう思いもよらぬことが時に起こる。今、何故か◯◯区主催の市民マラソン大会に出場している。
スタートを切った直後に右前方を走っている男。ゼッケン1267を付けた男。茶色に染められゆるくカールされた髪が妙にふわふわとリズミカルに揺れている様に気を取られる。深紅のタンクトップも印象的だ。歳はおそらく自分と同じくらいだろう。見た目は俗にいうヤンキーという感じだろうか。横に並びちらっと横目を使えば目つきは鋭く眉毛は片仮名の「ハ」を逆さにしたように、鋭敏に、そして怠り無く左右対称に剃り整えられている。普段運動を怠っているのは聞こえてくる息の粗さを聞けば歴然。タバコも吸うのかもしれない。そんなことを考えながら、悠々とそして優雅に茶髪ヤンキーの少しあがった息を後ろに置いてゆく。あとは自分のペースを守りゴールを目指せばよい。


長距離走は常に自分との戦いだ。足に語りかけ、肺の気分を聞く。ひたいの汗は心地良い風が自然と乾かしてくれる。もくもくと歩を進めランナーズ・ハイの領域まで達すればあとは惰性に近い。呼吸も自然とペースが整ってくるから不思議だ。前を走るランナーを一人抜こうが抜くまいがたいした問題ではない。走ることが心地よい。苦しくもない。自分の身体能力が思った以上に高く感じられるひとときをちょっとした優越感に浸りながらひた走る。新聞社から配られた旗を振る人々。無論自分だけにおくられている賛美ではないと知っていても、何故かそれは自分に向けられているものと勘違いしてしまう。こんな幸福感があるから走るのはやめられない。

もうすぐゴールだ。◯◯区市民マラソン第◯◯回。協賛するスポンサー企業の看板。いかにも簡易的なゴールのゲート。もうすぐ終わりだ。あと数十メートルで私はタオルに身を包み甘酸っぱいレモン味のゲータレードで喉を潤すことだろう。
そんな時、目に入ったのは遠く前方に飛び跳ねる小さな物体。少し近づけばそれが流線型のショウリョウバッタであることは容易に理解出来る。飛ぶ距離が妙に長い。そしてそれはバッタが羽を広げ小刻みに羽ばたいて飛距離を伸ばす常套手段と知る。自分は結構なペースで走り続けて来た。後ろにまだ数百人のランナーがいる。ショウリョウバッタはコースの真ん中よりちょいと左に寄った所で続けざまに羽ばたいている。このまま走り去ればそれなりの優越感と達成感を味わえるだろう。しかし、子供の頃に愛した草むらでも見つけにくい薄緑の細長い奴。放っておけるはずもなく私はショウリョウバッタを捕まえ保護する為に歩をゆるめた。しかし、相手はバッタ。パタパタと、またパタパタと、掌を大きく構え近づく私を翻弄する。

その時だった。バッタを中腰で追いかける私の横を通り過ぎる風。ゼッケンはもはや汗に濡れモタモタと肌に張り付かんとしているのだが、私の目に映ったそのナンバーは「1267」。茶髪のヤンキーはバッタと戯れている私を尻目に両腕を悠々と上げながらゴールラインを切った。
21キロメートルに渡り積み上げて来た優越感と恍惚感は一瞬で崩れ去った。



注:話はフィクションです

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No title

ノンフィクションだと思いました笑

2012-04-29 19:32 | from ハーバードナンパスクール佐藤エイチ

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